ニュースの概要
英国政府は11月5日、Lime、Voi、Beryl、Dott、Forest、Boltといった事業者が運営するシェア型電動自転車について、全国共通の運用基準づくりに向けた意見募集を始めました。案では、地方自治体が事業者を許可制で管理します。駐車の方法、車両の台数、地域の交通網との連携について、最低限の基準を自治体が決められるようになります。狙いは、歩道に乱雑に置かれた車両を減らし、車いすやベビーカーの通行をふさがないことです。政府は現状を「無法地帯」と表現しており、飲酒運転や歩道走行、未成年者の利用といった問題への対応も併せて検討する構えです。
引用元: 英国政府、シェア型電動モビリティの駐車・運用ルールを強化へ(UK Government)
分析・見解
自治体に権限を渡す、英国の方向転換
英国ではこれまで、シェア型電動自転車の運営に全国共通の法的な枠組みがありませんでした。電動キックボードは試験事業として限られた都市で運用され、自転車型は自治体ごとの合意や事業者の自主ルールに頼ってきた経緯があります。その結果、都市によって規制の強さに大きな差が生まれました。今回の案は、自治体に許可を出す権限と、守らせるための最低基準を与える点が核心です。国が細かく決めるのではなく、地域の事情に合わせて自治体が調整できる設計にしています。
歩道の占有は、使う側ではなく通る側の問題
シェア車両の議論は、とかく利用者の利便性を軸に進みがちです。しかし今回の案が重視したのは、車いす利用者、ベビーカーを押す人、視覚に障害のある人など、歩道を通る側の権利でした。ここに独自の視点があります。電動シェアの評価は、利用回数ではなく、使っていない人にどれだけ迷惑をかけないかで決まる時代に入りました。パリは2023年に電動キックボードの貸し出しを住民投票で禁止しました。ロンドンでも駐車指定エリアの導入が進んでいます。迷惑の可視化が、禁止か共存かを分ける分岐点になっています。
台数上限と駐車場所の指定がもたらす事業の変化
許可制になれば、事業者は台数を自由に増やせなくなります。これまでは先に大量投入して利用者を囲い込み、後から規制と折り合いをつける進め方が主流でした。今後は、自治体との契約条件を満たした事業者だけが市場に残ります。駐車場所の指定は、車両位置の把握と指定エリアへの誘導を求めます。位置情報の精度や、写真による駐車確認といった技術が、そのまま営業許可を左右する要素になります。小規模な事業者には負担が重く、再編が進む可能性は高いでしょう。
日本の現状と見比べて見えること
日本では2023年の改正道路交通法で、特定小型原動機付自転車(最高時速20キロ以下の電動キックボードなど)の区分ができました。ヘルメットは努力義務となり、16歳未満は運転できません。駐車については、歩道上の放置を防ぐため、事業者が専用ポートを設ける方式が広がっています。英国の自由に置ける方式と比べ、日本は先にポート型で秩序を作った形です。ただ、ポートの設置場所をめぐる地権者や自治体との調整は、今後ますます重くなります。英国の許可制の議論は、日本で自治体と事業者の契約を見直す際の参考になります。
ビジネスへの影響
事業者は、許可を前提に事業計画を組み直す必要がある
シェアモビリティ事業者にとって、台数の上限や駐車基準は、収益計画の前提条件です。許可制を見据え、自治体別に台数と稼働率の関係を整理しておくべきでしょう。稼働率の低い車両は上限が下がる局面で真っ先に削減対象になります。また、苦情の件数と対応時間を記録しておくと、更新審査で有利に働きます。歩道の放置率や、通報から回収までの平均時間を、自社の品質指標として公開する事業者が選ばれる流れになります。
自治体や不動産オーナーには、ポート提供の新しい機会がある
マンション、商業施設、駅前の遊休地を持つ事業者にとっては、ポート用地の提供が安定した副収入になり得ます。一方で、無秩序に置かれる車両の影響を受ける側でもあります。自治体は、地図上の駐車可能エリアを公開し、事業者にデータ連携を求める契約を結ぶことが現実的です。英国の議論が示すとおり、規制は禁止のためではなく、共存の条件を明文化するための道具です。
投資や提携の判断では、規制対応力を評価軸に加える
シェア事業者への出資や提携を検討する企業は、車両の台数や利用者数だけでなく、位置情報の精度、事故や苦情への対応体制、自治体との契約実績を見るべきです。規制が整うほど、これらを備えた事業者に市場が集中します。逆に、急拡大型で自治体との関係が薄い事業者は、許可制への移行で一気に事業縮小を迫られる恐れがあります。