ニュースの概要
インドの二輪大手Hero MotoCorpが展開する電動スクーターブランド「Vida」の販売台数が、2026年1月1日から10月29日までで200,143台となり、年間ベースで初めて20万台を超えた。2025年の通年実績は113,021台で、すでに約1.8倍に達している。10月単独の納車は27,435台で、前年同月の16,499台から約66%増え、月次の過去最高を更新した。伸びの勢いは年末に向けても衰えていない。電動二輪の競争が激しさを増すなかで、老舗メーカー系のブランドが量の面で存在感を一気に高めた形である。
引用元: インドの電動スクーター市場でHero Vidaの販売台数が年間20万台を突破(Autocar India)
分析・見解
年間113,021台から200,143台へ、加速する後半戦
2025年の通年実績が113,021台だったのに対し、2026年は10月29日時点で200,143台に達した。まだ2か月残っているため、10月の勢いが続けば25万台に迫る計算になる。
注目したいのは月ごとの形である。10月の27,435台は、1月から10月までの月平均(約2万台)を3割以上上回る。年の後半ほど売れ行きが強まっており、一時的な値引き効果というより、需要が積み上がっている様子がうかがえる。
強みは製品より先に、全国の販売店と整備網にある
Hero MotoCorpは世界最大級の二輪メーカーで、インド国内に長年かけて築いた販売店と修理拠点を持つ。電動専業の新興メーカーは、店を一軒ずつ増やすところから始めなければならない。Vidaは既存の販売網に電動車を並べられる。この差は、カタログ上の性能差よりも大きく効く。
また、電池を車体と切り離して契約し、購入時の価格を下げる売り方も広がっている。電動二輪の最大の壁は、購入時に払う金額の高さである。そこを下げる工夫を、販売力のある会社が実行した意味は大きい。
電動化の勝負は、壊れたとき直せるかで決まる
インドの電動二輪市場では、新興勢が先に伸びた。ところが、故障時の対応や部品の確保に不満が出る例も指摘されてきた。初めて電動車を買う人が最も恐れるのは、速さではなく「止まったときに近所で直せるか」である。
日本でも同じ構図がある。電動キックボードの共有サービスでは、車両の点検や事故への備えが利用者の信頼を左右してきた。売る力に加えて、直す力と守る力を持つ事業者が、結局は長く残りやすい。
次の壁は補助金の縮小と、都市部の充電環境
電動二輪の急成長には、政府の購入支援が追い風になってきた。支援は段階的に小さくなる流れにあり、補助が減った後も売れ続けるかが試される。価格が下がらなければ、20万台の勢いが続く保証はない。
もう一つは充電である。集合住宅が多い都市部では、自宅に充電設備を置けない人が多い。電池の交換式や共用の充電拠点が整えば、市場はさらに広がる。逆に整わなければ、販売台数と使い勝手の間に差が開く。台数の伸びだけでなく、使われ続ける環境が整うかを見る必要がある。
ビジネスへの影響
販売網を持つ企業が電動化で有利になる理由
Vidaの伸びは、新しい技術だけで市場が動くわけではないことを示している。顧客に近い場所で売り、直し、相談に乗れる体制が、技術の差を上回る場面がある。日本で小型モビリティやシェアサービスを展開する企業も、車両の性能比較に時間を使うより、点検の頻度、代替車両の手配、問い合わせ窓口といった「止まらない仕組み」への投資を優先したほうがよい。
日本の事業者が持ち帰れる三つの視点
一つ目は、初期費用を下げる契約の工夫である。電池の月額利用や、車両のサブスク(=定額での貸し出し)は、導入のハードルを下げる。二つ目は、補助金に頼らない収益の組み立てである。制度が変わっても採算が崩れない設計にしておく必要がある。三つ目は、充電や保管の場所の確保だ。自社で置けないなら、駅前の店舗や駐輪場の事業者と組むという選択がある。
インドと日本は市場の規模も道路事情も違う。ただ、「安く始められ、壊れても安心で、置き場に困らない」という三条件は共通している。自社の事業をこの三つで点検すれば、次に打つ手が見えやすくなる。